2025年前期の朝ドラ「あんぱん」で視聴者の心を掴んでいるキャラクター・辛島健太郎、通称「健ちゃん」。高橋文哉さんが演じる博多弁の明るい青年は、主人公の嵩(北村匠海)の親友として重要な役割を果たしています。そんな健ちゃんについて、「モデルとなった実在の人物がいるのでは?」という疑問を抱く視聴者も多いでしょう。
結論から言うと、健ちゃんのモデルについては二つの説が有力視されています。一つは、やなせたかしさんの学生時代の同期生である挿絵画家・風間完さん。もう一つは、やなせさんの代表作「アンパンマン」に登場するカレーパンマンです。しかし、完全に特定の実在人物をモデルとしているわけではなく、複数の要素を組み合わせた創作キャラクターである可能性が高いと考えられています。
あんぱん健ちゃんのモデル候補①:風間完
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風間完とはどんな人物か
やなせたかしさんのモデル候補として最も注目されているのが、風間完(かざま・かん)さんです。風間さんは1919年1月19日生まれの挿絵画家で、やなせたかしさんと同じ東京高等工芸学校図案科の同期生でした。
風間完さんは昭和を代表する挿絵画家として活躍し、五木寛之、松本清張、向田邦子など著名な作家の文芸作品の挿絵を数多く手がけました。特に1966年の朝ドラ「おはなはん」のタイトル画を描いたことでも知られており、NHKとの縁も深い人物です。
やなせたかしとの関係性
風間完さんとやなせたかしさんは、東京高等工芸学校で机を並べた同級生でした。戦争という激動の時代を背景に、真の友情を育んだ間柄だったと言われています。この関係性は、まさに「あんぱん」での健ちゃんと嵩の友情と重なる部分があります。
風間さんは卒業後、兵役に服した後、挿絵画家として活躍しました。パリに留学して絵を学び、帰国後は新聞や雑誌の小説挿絵を中心に活動を続け、昭和文学を視覚的に彩る存在として高い評価を得ていました。
モデル説の根拠と疑問点
風間完さんがモデルとされる理由として、名前の響きの類似性が挙げられます。「かざまかん」と「からしまけんたろう」という音の近さから、この説が注目されました。また、やなせたかしさんと同じ学校の同期生であったという事実も、モデル説を支持する要因となっています。
しかし、この説には大きな疑問点もあります。最も重要なのは出身地の違いです。健ちゃんは福岡出身で博多弁を話しますが、風間完さんは東京都生まれ。また、健ちゃんは戦後にNHKに就職するという設定ですが、風間さんは画家として生きた人物で、人生の軌跡が大きく異なります。
あんぱん健ちゃんのモデル候補②:カレーパンマン
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カレーパンマンとの類似点
もう一つの有力な説が、アンパンマンの仲間であるカレーパンマンをモチーフにしているというものです。この説は、健ちゃんの名前や行動から自然に生まれた推測です。
まず注目すべきは名前です。「辛島」という名前には「辛」という文字が含まれており、カレーの特徴である「辛さ」と直結します。また、劇中で健ちゃんがカレーライスを作るシーンがあることも、この説を裏付ける要素として挙げられています。
性格の共通点
カレーパンマンの性格は「短気で喧嘩っ早く熱血な一方で、非常に涙もろい江戸っ子のような性格」と設定されています。アンパンマン同様、弱い者を決して見捨てない優しさと勇気を持っており、粗野な口調が目立つものの、人情深く面倒見のいい性格です。
これらの特徴は、健ちゃんのキャラクターと多くの共通点があります。明るく人懐っこい性格でありながら、時には短気な一面を見せる健ちゃんの人物像は、まさにカレーパンマンを彷彿とさせます。
やなせたかしの思い入れ
興味深いことに、やなせたかしさん自身がカレーパンマンについて「スパイス役」と語っており、カレーは学生時代からの好物だったと言われています。やなせさんが作詞したカレーパンマンのテーマ曲「とべ!カレーパンマン」も本人のお気に入りでした。
やなせさんが書いた詩「カレーパンマン」には、学生時代の思い出が込められており、その内容は健ちゃんと嵩が共に過ごす芸術学校時代や下宿生活を思わせる内容となっています。
アンパンマンキャラクターとの関連性
「あんぱん」では、モデルが明確でない登場人物について、アンパンマンのキャラクターをモチーフにすることが多いとされています。健ちゃんが召集される前夜に嵩に振る舞うカレーが「いつもより辛く」仕上がっているという描写も、カレーパンマンの「辛さ100倍」という決め台詞と通じるものがあります。
まとめ
健ちゃんのモデルについて検証した結果、特定の実在人物のみをモデルとしているのではなく、複数の要素を巧みに組み合わせた創作キャラクターであることが分かりました。
風間完さんとの類似点は確かに存在しますが、出身地や人生の軌跡の違いから、完全なモデルとは言い切れません。一方で、カレーパンマンとの共通点は名前から性格まで多岐にわたり、やなせたかしさんの学生時代の思い出とも重なる部分があります。
おそらく健ちゃんは、脚本家の中園ミホさんが、やなせたかしさんの実体験や交友関係、そして彼が生み出したキャラクターのエッセンスを織り交ぜて創造した、フィクションでありながらリアリティを持つ人物なのでしょう。
戦後の混乱期を生き抜き、好きなことを仕事にして、メディアの世界で人の心に触れる仕事をする――そんな現代にも通じる「希望のかたち」が、健ちゃんには込められているのかもしれません。彼がこれからどのような道を歩んでいくのか、物語の展開とともに見守っていきたいと思います。
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